.es(ドットエス) Live at Gallery Nomart“Living in Light”(2019.2.2)
2019年2月2日(土)、大阪市内にあるギャラリーノマル(Gallery Nomart)にて開催されていた東影智裕(ヒガシカゲ・トモヒロ)氏の作品を集めた“Living in Light”最終日に行ってきた。
(.esのsaraさんと橋本孝之さん)
東影氏の作品展示も今夜で終わり。そして、最終日はノマル専属アーティストの .es(ドットエス)のライヴがある。
オーナーである林聡さんの挨拶から
「今夜のライヴは“Walking in Light”、“Singing in Light”、そしてイベントのタイトルになっている“Living in Light”の3部構成となっているので、お楽しみ下さい」
と解説があり、今夜も一筋縄ではいかなそうなワクワク感を煽ってくれた。
手短の解説が終わり、会場の電気が消された。
真っ暗な中、会場内の中央にある長テーブルのみ照明が当てられる。
そして、アコースティックギターを抱えた橋本孝之さんが登場。
“Walking in Light”
眼帯をしているように見え『目を怪我されたのかな?』と思ったが、よく見るとこれも東影氏の作品だった。
ひたすら妖しいカッティングをループしながら長テーブルの周りを静かに徘徊し始める。
暗闇の中、いつの間にかsaraさんが登場し、ピアニカを弾きながら、彼女もまた長テーブルの周りを歩き始めた。
長テーブルを挟んで対峙している二人の姿は、まるで西部劇のワンシーンのようで、だけど中世ヨーロッパ風の衣装に身を包んでいるという、摩訶不思議な異空間へと僕ら聴衆を連れていく。
橋本さんのアコースティックギターが「ガチッ!ガチッ!」と硬質な音を響かせる。後で知ったが、ピックの代わりに5円玉を使って弾いていたとのこと。クイーンのブライアン・メイも6ペンスコインでギターを弾き、彼独特の音を鳴らしていたのを思い出した。
saraさんはピアノ、橋本さんはハーモニカと楽器をチェンジ。
“Singing in Light”
いつものsaraさんと違い、ここで演奏されたピアノは“鍵盤の音だけ”で表現されていた。
知らない人は「そんなの当たり前だろうが」と思われるかもしれないが、実際に観た人には彼女の演奏が“普通じゃない”のが分かるはずだ。
ただ、この夜のピアノはクラシックのような、彼女の原点を思い起こさせる真っ直ぐな演奏で、ひたすら美しい旋律を奏でる。
それでも、よく見ると掌で時折“バンッ!!バンッ!!”と激しく鍵盤を叩いている。やはり“普通のようで、普通じゃない演奏”だ。
橋本さんのハーモニカも呼応するかのように“歌う”。
この瞬間は美メロ好きの僕にはたまらない一時で、ドットエスのお二人がこういう音をずっと奏でているのを観たのも初めてだったので、非常に貴重な体験だった……。
最後は、このイベントのタイトルにもなっている“Living in Light”。
メトロノームの「カチッ、カチッ……」というリズムを頼りに、橋本さんが長テーブルに置かれているサックスを手に取り、saraさんはカホンを叩き始める。
ここまできた時には、その瞬間を“感じること”しか出来なかった。
どんな演奏をしていたのか覚えてなく、ただただ圧倒された。
たまに、高い天井をぶち破る勢いまで激しくなっていたのだけが、記憶に残っている。
(左からsaraさん、林さん、東影さん、橋本さん)
ドットエスの演奏は毎回違うし、作家とのコラボや季節でも印象が全く変わるが、今回の3部構成という展開は特に斬新だった。
今更ながら、このギャラリーノマルという会場は「何にでも化けられるな」と感じた。
会場内が真っ白な空間のため、アーティストの世界を120%以上引き出してくれる。
そして、ドットエスも“形の無い演奏をしている”、と僕は感じている。
形の無い空間で、形の無い演奏。
そこでは、あくまでもアーティストの作品が主役となっていて、彼らも会場も“作品の一部”となっているようだった。