シューゲさんのまったり音楽日記

洋楽中心に1記事につき3〜5分程度で読める内容にしているので、気になったミュージシャンがいれば添付してある音源をご視聴頂けたら幸いです。

.es(ドットエス) “Gather - Gift” Closing LIVE(2019.03.16)

ギャラリーノマル(Gallery Nomart)にて開催していた展覧会“Gather - Gift”。


最終日にあたる2019年3月16日(土)に行われたクロージングライヴ。


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ノマル専属アーティスト“.es(ドットエス)”がラストを締め括った。



ドットエスは橋本孝之(サックス、ハーモニカ、ギターetc.)とsara(ピアノ、カホンetc.)の二人組で、“コンテンポラリー・ミュージック・ユニット”と紹介されている。


“コンテンポラリー”は、“今日的な”や“現代の”という意味になる。


ドットエスの演奏は何度も観ているが、これが僕にはどうにもずっと引っ掛かっていて、謎だった。



そんな“謎の二人組(?)”や前衛芸術家たちの作品に刺激を受けている僕にとって、ノマルという場所は、いつの間にか“創造の源”のような場所となっていた。









定刻の19時半。


スタッフから短い解説が終わり、ライヴが始まった。









橋本氏はギブソンギターをアンプへプラグイン


いきなりジミ・ヘンドリックスばりのフィードバックノイズが会場全体に轟きだした。


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スケールを弾くわけでも無く、かといってコードを掻き鳴らすわけでも無い。



目を“カッ!”と見開くようなギターを炸裂させたかと思えば、すぐさまアンプの電源をオフにする。



ギブソンの生音が時計を刻むように“カチッ、カチッ……”とかすかに聴こえてくる。



そして、再び雷鳴のようなエレクトリックノイズ。




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ピアノの鍵盤だけでなく、調律弦を爪弾くというsaraさん独自の音が、隙間を縫い合わせていく。


時には、鍵盤の裏側を打楽器にして指先で叩く。



そこには、五線譜では描かれることの無い、ただの“ノイズ”が存在していた。




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橋本氏はギターからサックスにチェンジし、最後はハーモニカへと繋げていく。

どの楽器を使っても“橋本節”は変わらない。


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saraさんはピアノの鍵盤を荒々しく叩く。

中盤から後半にかけては、まるでニューヨークパンクの雄であるテレヴィジョンのトム・ヴァーレイン並みの“痙攣ギター”ならぬ“痙攣ピアノ”とでも言えばいいのか、音楽というものを根底から破壊していくようだった。






真っ白な会場内を縦横無尽に駆け巡る音の塊から、ほんの一瞬だけ感じられる、メロディーの“漏れ”。



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“ジミヘンばりのフィードバックノイズ”、“トム・ヴァーレイン並みの痙攣ピアノ”なんて、自分が今まで聴いてきた音楽知識から掘り起こされたように感じたが、結局のところは“.esの音”で、それは他の何者でも無い。



何のルールも無い、何の縛りも無い、彼ら二人だけが鳴り響かせられる音。



ただ、それだけだ。












……ライヴ終了後。





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ドットエスのお二人と、今回の展覧会に作品を展示された三作家(稲垣元則、田中朝子、今村源)、それにノマルオーナーである林聡氏のトークイベントが行われ、今回のテーマ“漏れ”についてそれぞれが感じたままに話された。




そして、ちょっとしたサプライズがあった。


オーナーの林さんから、この夜集まったお客を代表して、僕に今回の展覧会の感想を指名してくれたのだ!





……いや、何となく当てられそうな予感がしたんですけど(汗)。





この時は本当に不思議だったんだけど、なんか、テレパシーのようなものを感じてしまって、『俺が言わなきゃ!』という気持ちが林さんやノマルに通じてしまったのかもしれない。







最初は『何も無い……』と呆気にとられたこの真っ白い空間が、何度も足を運ぶことによって、自分の創造力を刺激された話を素直にぶつけてみた。




ドットエスの演奏も『よく分からない』から始まって『でも、何かがある』と感じて、今に至っている。


それでも、正直なところ、今でも“よく分からない”ままだったりする。



今回、展示された田中朝子さんの“たくさんの角砂糖を正方形にしたもの”も、最初見た時は信じられない思いだった。



稲垣元則氏の木々の写真や映像も、ただそこに存在しているものを映し出していた。



今村源氏の“空洞の回転する部屋”も、何だか分からない。




だけど、今回展示された三作家の作品はバラバラなはずなのに、不思議と統一感があるのも印象的だった。


各作品やこの日の演奏には“漏れ”があって、その隙間を観た人それぞれの創造力で埋めていき、完成させる。



今回の展覧会初日、初めて入った時の、あのワクワク感を僕は忘れない。






冒頭に書いたドットエスの“コンテンポラリー・ミュージック”については、今回も謎のままだった。



ただ、展示されている作家の作品を観て、ドットエスをはじめとするミュージシャンたちのライヴをたくさん観てきて感じるものがある。



ここに居ると、今が2019年なのかどうかも分からなくなることがあって、1950年代にでもタイムスリップしたかのような錯覚に陥る時がある。



ここが日本でなくて、ヨーロッパのどこかの国やニューヨークにでも居てるような感覚に襲われることもある。




“コンテンポラリー” = “今日的な”、“現代の”とはかけ離れているかもしれないけれど、彼らは“今、この瞬間にしか生み出せないもの”を創造しているように感じた。








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