THE STROKES (ザ・ストロークス)
今回はニューヨークのバンド、ザ・ストロークス(THE STROKES)について書き綴る。
2000年代初頭、世界同時多発的に“ロックンロール・リヴァイヴァル”と呼ばれるブームが起きた。その代表的なバンドがザ・ストロークスで、ここ日本でも各音楽誌がこぞって彼らを大々的に紹介していたのを今でも覚えている。
しかし、ストロークスの取り上げられ方はちょっとした異常さを僕は感じていた。
何の前触れも無くいきなり登場してきた新人バンドを巻頭ページの特集にあて、メンバー写真をデカデカと見開き2ページに渡り挿入し、次ページからはバンドの徹底レビュー。
つい先月までの音楽誌にはそんな情報は一切無かったはずなのに、本当に突然の出来事だった。
正直、面食らったというか、『えっ?!何が起きたの???』という印象だった。
それがひとつの音楽雑誌のみなら『ああ、この雑誌の次のイチオシはこの人達なのか』と納得していただろうし、それならまだ分からないでも無かったが、この時の取り上げられ方は今思い出しても本当に異常で、毎月何冊も発売されていた音楽誌が同時に彼らを大特集していた。
この頃の僕はというと、海外ロックに興味を持って数年が経った頃で、自分にはまだインターネットの環境も整っておらず、情報源は毎月発売されるロッキング・オンやクロスビート等の音楽誌で、そこで新しい情報を得られるのを毎月楽しみにしていた。
そうやっていつも愛読していた何冊もの音楽誌でも、こんな取り上げられ方はそれまでの数年間に一度も無かった。
“ロックンロール・リヴァイヴァル(=ロックンロールの復活)”という表現も、毎日のように大音量でロックばかり聴いていた僕には違和感がありまくりだった。
そして、それから間髪入れずにMTVなどでストロークスの楽曲が毎日流れるようになり、“Last Nite”のPVでその曲を聴いた時、とにかく音がペナペナだと拍子抜けしたのを覚えている。
1stアルバムの収録曲に“The Modern Age”というタイトルもあったが、『どこが“Modern Age(現代)”なんだ?!』とツッコミどころ満載だった。
(1st“Is This It”)
彼らの音作りは70年代に活躍したモダン・ラヴァーズのようで、現代どころか四半世紀前の音に思えたし、アルバムを通して聴くと同郷であるニューヨークの大先輩バンド、テレヴィジョンにそっくりだった。
インタビュー記事を読んでいるとストロークスのメンバー達も「テレヴィジョンに似ている」とよく言われていたそうだが、その度に彼らは「皆そう言うけど、マジで聴いたこと無いんだって!!」と必死に否定していた。
だが、聴けば聴くほどテレヴィジョンに音が酷似しているし、『絶対に知ってるだろうし、寧ろ大好きだろ!!』と言いたくなった。
そんなわけで、僕はストロークスに対して少しばかりの嫌悪感を抱いていたし、どうせ聴くのであれば高校生の頃から愛聴しているテレヴィジョンのアルバムを聴く方を選んだ。
余談だが、ロックンロール・リヴァイヴァル(今でも僕は完全にメディアが作り上げたシーンだと思っているが)と呼ばれたシーンの中で好きになったのはヴァインズやハイヴス、それにヤー・ヤー・ヤーズといったバンド勢で、よりパンキッシュな音を好んでいた。
当時の僕はアメリカのロックバンドに対し、「大衆受けする、深みの無い音楽をやる人達ばかり」だと思っていたのもあったせいで、それは大雑把でただワイワイ騒いで楽しむだけの“中身の無い大金を投じたハリウッド映画”と同じ匂いがしているように感じていた。
(注:今はアメリカにもいろんなタイプのバンドが居ると知ったので、あくまでこれは当時の感想です)
そんな僕でも2003年発表の2nd“Room On Fire”に収録されている先行シングル“12:51”を初めて聴いた時はちょっとした感動を覚えたりしたものだった。
(2nd“Room On Fire”)
黄昏時、カーラジオから流れたこの曲を聴いた瞬間、初めて聴く曲なのにどこか懐かしさを感じ、誰の曲かも分からなかったが『ひょっとしてコレ、ストロークスの新曲じゃないのかな?』と思ったら、やはりその通りで、『やっぱりこのバンドだと分かる“音”を出しているんだ』と感嘆した。
そんな経緯もあり2ndはそれなりに聴いてはいたが、それから先のストロークスは追わなくなっていた。
多分……というか、正直なところ、僕自身このバンドがそんなに好きでは無かったんだろう。
3rdの先行シングル“You Only Live Once”のPVは下水道の汚水に埋没する演出が面白いと思ったがアルバムを購入するまでには至らず、それから5thアルバムまでは一切聴いていない状態だった。
ただ、ここ何年かに行ったいくつかのライヴで出会った人達に「好きなバンドは?」と聞くと、かなりの人がストロークスの名前を挙げていたので、その間に僕の中でこのバンドの見方が変わってきた気がする。
2000年以降にロックを聴き始めたリスナーにとってストロークスというバンドがリアルタイムの音であり、“Modern Age Music(現代の音楽)”なんだと、その時に初めて思った。
そして、2013年に5thアルバムを発表してからバンドとして活動している様子も無かったため、『そういやストロークスってもう解散したのかなぁ』と思っていた矢先、今年(2020年)初頭に7年振りのニューアルバムが発表された。
(6th“New Abnormal”)
僕にとって特別好きなバンドではなかったはずなのに、解散せずにまだ続いているというのが“いちロックファン”として素直に嬉しかった。
最新のメンバー写真を見ても、全員デビュー当時よりも痩せていてスタイリッシュな雰囲気を漂わせていたし、その佇まいだけで期待できるのではと思った。
実際に曲を聴いてみると、相変わらずジュリアン・カサブランカス(ボーカル)はモッサイ歌い方をしていて(失礼!)、聴いた瞬間に『おお、ストロークスだ!!』と安堵するアルバムで、やはりテレヴィジョンからの影響が窺えて(笑)、だけど彼らだと一聴して分かる音だった。
21世紀に入ってからロックを聴き始めた人達にとって、彼らの健在ぶりは余計に嬉しい出来事だったに違いない。
Last Nite
https://youtu.be/TOypSnKFHrE
The Modern Age (LIVE2001)
https://youtu.be/KU8VOrgUwgI
12:51
https://youtu.be/LPAVDHo1Elc
You Only Live Once
https://youtu.be/pT68FS3YbQ4
Bad Decisions
https://youtu.be/5fbZTnZDvPA
LOVE