ジョン・クラウスバウアー+鈴木花織、sara Live at Gallery Nomart
3月28日(水)、大阪市内にあるギャラリーノマル(Gallery Nomart)でドローンミュージックなどを手掛けているアメリカはカリフォルニア州を拠点に活動をされているというジョン・クラウスバウアー(John Krausbauer)と鈴木花織(Kaori Suzuki)夫妻、それにノマル専属アーティストである.es(ドットエス)のピアニストsara(サラ)さんのライヴに行ってきた。
(左からジョン・クラウスバウアー、鈴木花織、sara)
今年初めにここで行われたライヴでドットエスの存在を知り、それから彼らに興味をもち このノマルでライヴがある度に足を運んでいて、saraさんの生演奏は今回で3回目になる。そして、一緒に出演される二人のミュージシャンについてはフライヤーに書かれた情報しか知らなかったが、とにかく新しい体験ができそうな予感がしたので迷わず参加した。
会場のドアを開けると、ジョン氏と鈴木氏のリハーサルの最中で、1分ほど彼らの演奏を聴いた時点で『これはスペシャルな夜になる!!』と確信した。
定刻の19時半になり、ライヴがスタート。
先ず、ギャラリー専属アーティストのsaraが登場し、ピアノソロを披露。
saraさんの演奏は普通に指で音を鳴らすだけでは済まず、ピアノの調律をいじったり、鍵盤を掌で叩いたりと“型破り”という表現がピッタリ当てはまり、音楽教室や授業ではタブーとされることをこれでもかとやり続ける。それはユニットを組んでいるサックス、ギター&ハーモニカ担当の橋本孝之さんも同じで、予測不可能な演奏が最大のウリだ。
だけど、初めて彼らの演奏を観ていて感じたのは、『この人達は絶対に基礎をちゃんと学んだ上で自分たちのスタイルを確立していったんだろうな』ということだった。
僕も10代の頃にピアノを習っていた時期があったので、“基礎が出来ないとこういう演奏って出来ないんじゃないのかな”と何となくだけど分かって、後で知ったけど、やっぱりsaraさんは5歳の頃からクラシックピアノを習っていたということだった。
個人的な感想としては、saraさんのピアノ演奏はこれで3回目だったけど、今回が一番良かったと感じた。毎回、予測がつかないし、メロディーを奏でているわけではないから“何がどう良い”と言うのは表現できないけれど、自分のその時の“感じ方”もあったと思う。
saraさんのソロが終わり、客席で観ていたジョン氏と鈴木氏が入れ代わってステージの椅子に腰掛け、直ぐに演奏を始めた。
ドローンやミニマル音楽って“同じメロディーをひたすらループする、民族音楽などをルーツとするもの”らしいけど、僕は今までテレビ番組などでしかほとんど聴いたことが無かったかも。強いて言えば、ブライアン・ジョーンズの遺作となった『ジャジューカ』はモロッコ音楽をやっていて、それは友人に借りて気に入り何度も聴いたぐらい。
それでも、基本的には爆音で“ずっと同じ音が鳴り響いている”だけのはずなのに、高揚感が物凄く、聴いているうちに“宇宙”を感じたり、“胎児が母親の胎内に居る状態”の感覚に陥り、このままずっと聴いていたくなる心地好さがあった。
演奏が後半に突入するとジョン氏はエレクトリックヴァイオリンを、鈴木氏はエレクトリックギターを手にしていたが、このギターは5弦と3弦の2本のみを張って使用していた。更に驚いたのは、ギターの弦を一度も押さえること無くボウイング奏法でトーンとボリュームコントロール、それにペダルのみで音を調整しながら弾き続けていたので全く別の楽器の様に見えた。
演奏は40分ほどで終了。
正直、まだまだ聴き足りないぐらいだった。
終了後、saraさんは着替えのため居なかったのでジョン氏と鈴木氏に話しかけ、拙い英語だけど興奮して喋りかけたら熱意が伝わったみたいでジョン氏もすごく喜んでくれた。
ジョン・クラウスバウアーさん、これがまたスラッと背が高く顔立ちもカッコ良くて、しかもルックスも最高。特に赤い靴が超お洒落だった。気さくで優しい目をされていたのも印象的だったな。
そして、演奏中にあの爆音でのエレクトリックノイズを聴いてるうちに『マイ・ブラッディ・ヴァレンタインとか絶対に聴いてるはず!!』と分かったので、シューゲイザーの話もしてみたら やはり知っていて好きだと言われていた。
僕が知った時には死語の様な存在だったのに、いつの間にかシューゲイザーというジャンルが世界中の音楽ファンや次世代ミュージシャンに浸透されていたのは本当に嬉しかったな……。
お二人に“Please play here again!!!!”とお伝えし、またいつかここでライヴをしてくれる日を楽しみにしている。
そして、できる事ならいつか僕が彼らの活動拠点となっているカリフォルニア州オークランドへ行って現地で再び体験できたらな……と思い、そんなこともこれからの人生の目標にして一日一日を楽しみたいと感じさせられた夜だった。