LUSH / TOPOLINO (1996)
今回はラッシュ(イギリスの“LUSH”の方ね)が1996年に発表した来日記念盤“TOPOLINO(トポリーノ)”について書き綴る。
リアルタイムでは聴いてはいなかったし、そもそも彼女達の存在すら知らなかったが、それでも僕にとってラッシュというバンドは思い出深く、一番大切なバンドのひとつだ。
そんな中でもこの日本のみで発売された特別編集盤はジャケットのアートワークも大のお気に入りで、シングル“500(Shake Baby Shake)”を中心に3rdアルバム“LOVELIFE(ラブライフ)”未収録曲で構成されている。
そして、これがなかなかお洒落な楽曲が多く、実験的な曲もあったりと、ぶっちゃけて言うと散漫な印象のある『ラブライフ』よりも全然良い出来栄えだ。
ラッシュの音楽を初めて聴いたのはもう随分前だが、その頃はシューゲイザーという音楽を聴くと完全に現実逃避してしまうようになっていたため(重病やな……)、長いあいだ聴かなくなっていた。
それが、You Tubeという媒体を通してPVやライヴ映像で彼女達の歌っている姿を観て、久々に楽曲を聴いているうちに『こんなに良い音楽だったんだ!』と思わされ、それから現在に至っている。
メインボーカル&リズムギターを務めるミキ・ベレーニとバッキングボーカル&リードギターのエマ・アンダーソンという2人の女性を軸として、リズム隊はドラムのクリス・アクランドとベースのフィリップ・キング(デビュー時はスティーヴ・リッポンが担当)という男性2人の、男女混合バンド。
ミキちゃんのお母さんが日本人ということもあり、初めて写真を見た時も、僕らにも親しみやすさがあるように感じた。
ミキちゃん、エマちゃんの2人ともルックスが良くて男性陣が陰に隠れがちだが、クリスもフィルも丹精な顔立ちをした男前だと思うんだけどなぁ……。
話がズレたが、You Tubeで久々にラッシュの初期楽曲をいくつか聴いた後に“500(Shake Baby Shake)”のPVを初めて観た時、あまりにシンプルすぎるギターソロに笑ってしまったのだが、その音数の少ないアルペジオから紡ぎ出されるメロディーを聴いているうちに、気が付くと自然と涙が溢れていた。
ギターソロといえばギタリストの技量をここぞとばかりに惜しげもなく披露できる絶好の機会のため、上手い人は弾きまくっていたりするが、エマちゃんの場合は、もうこれ以上無いというほどに音数を減らしている。
しかし、彼女の生み出す音は贅肉を削ぎ落とし、極限まで無駄を省いているというか。
そして、ミキちゃんのボーカルはというと、デビュー当時の幽玄で神々しい歌い方は影を潜め、替わりによりロック色とポップ色を強めている。
ラッシュの楽曲を聴いていると、ミキちゃんの声が本当に素晴らしく、僕は彼女の歌声を“虹色の声の持ち主”だと思っている。
キュートに歌い上げたかと思えば、天使か女神が乗り移ったかのような歌声を披露し、そして、いかついロックな歌い方もできる。
お世辞抜きで彼女が一番好きなボーカリストなのだ。
21世紀になって星の数ほど出現した“ドリームポップ”と呼ばれる音楽をやっているミュージシャンやバンド勢へ確実に影響を与えているはずだし、実際、僕のお気に入りのビーバドゥービー(Beabadoobee)もミキちゃんやラッシュからの影響を公言している。
この来日記念盤を引っさげて日本公演を敢行した後、ドラマーのクリスが自殺してしまったため、解散することとなったラッシュ。
残されたメンバーは打ちのめされただろうし、クリスと学生の頃からの付き合いだったという彼女達の心が欠けてしまったんじゃないかと感じている。
もし彼が生きていたら、あの後も地道に活動を続け、もっと沢山の素晴らしい音楽を残してくれていたと思う。
このアルバムを聴きながら、当時の彼女達に想いを馳せると同時に、涙を流し聴いていた僕自身を思い出す。
I Have The Moon
https://youtu.be/aBqaKea_Pek
500 (Shake Baby Shake)
https://youtu.be/ODdZ4QhnXJI
I Wanna Be Your Girlfriend
https://youtu.be/wxkElQsm_Ag
500 (Shake Baby Shake)(LIVE1)
https://youtu.be/ha__1-fDcCI
500 (Shake Baby Shake)(LIVE2)
https://youtu.be/4pJoW39PIwE