シューゲさんのまったり音楽日記

洋楽中心に1記事につき3〜5分程度で読める内容にしているので、気になったミュージシャンがいれば添付してある音源をご視聴頂けたら幸いです。

SPECTRUM / Highs, Lows And Heavenly Blows (1994)

今回はスペクトラム(SPECTRUM)が1994年に発表した2ndアルバム“Highs, Lows And Heavenly Blows”の思い出を書き綴っていく。


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スペクトラムは元々バンド形態だったが、このアルバム以降はピーター・ケンバーというミュージシャンのソロプロジェクトのひとつとなっている。

つい先日、ピーター・ケンバーが“ソニック・ブーム(Sonic Boom)”名義で新作を発表したこともあり、久々にこのスペクトラムのアルバムを聴いている。



以前紹介したスピリチュアライズドの記事に少し書いたが、80〜90年代初頭までイギリスで活躍したバンド“スペースメン3(SPACEMEN 3)”のもう一人の中心人物がピーター・ケンバーで、彼がバンド解散後に結成したのがこのスペクトラムだ。

スペースメン3の残りのメンバーが結成したスピリチュアライズドは90年代の英国ロックを代表するバンドとなり、ピーター・ケンバーと知名度だけでなく商業的な成功面においても雲泥の差があるはず。

しかし、僕が最初に知ったのはUKロックファンに認知されているスピリチュアライズドでもなく、その前身バンドのスペースメン3でもなく、このスペクトラムだったりする。


多分、こういうパターンはヒジョ〜〜〜ッに珍しいはず……。





以前、レッド・ハウス・ペインターズの記事で「生まれて初めてジャケ買いした」と書いたが、記憶を辿ってみるとそれよりも前にジャケ買いしたアルバムがあったのを思い出し、それがスペクトラムだった。



18歳の頃に中古レコード店で偶然見つけたのがこのアルバムで、ジャケットの何ともいえない抽象的なアートワークに惹かれて手にしたのを今でもよく覚えている。


ジャケットを裏返すと“SILVERTONE RECORDS”のロゴが目に止まった。


シルヴァートーン・レコードといえばストーン・ローゼズの1stアルバムで知っていたが、調べていくうちにこのレーベルには他にも僕の知っているミュージシャンが何人か在籍していた。

その中にはジョン・リー・フッカーやボ・ディドリーといった古い黒人ブルースマン達も新作を発表しており、更にジョン・メイオールもアルバムを出していた。

ジョン・メイオールはアマチュア時代のローリング・ストーンズのメンバーを自身のバンドで演奏させ、あのエリック・クラプトンがデビューした時に在籍していたのがジョン・メイオール&ザ・ブルース・ブレイカーズで“ブリティッシュ・ホワイトブルースの父”とも呼ばれている人だ。


この頃には前述したストーン・ローゼズを筆頭に、ザ・スミスニュー・オーダーといったインディーレーベル出身のバンドを意識するようになっていたのだが、普通ならレーベルの特色というか、所属しているバンドやミュージシャン達に音楽性などで共通するものがあるのに、このシルヴァートーンはミュージシャンのカラーも曖昧でまとまりの無いレーベルだと感じていた。

ただ、その時点で僕はローリング・ストーンズ関連の書籍をかなり読み漁っていたため、それらの古いミュージシャンのことを知っていたのが良かったのだろう。

“まとまりは無いが、音楽史に貢献した過去の偉人達と契約を交わしたレーベル”として僕は認識していたし、シルヴァートーンから発表した初期ストーン・ローゼズの楽曲群が大好きだったのもあり、そんな理由でこのスペクトラムのアルバムを購入しようと決めたのだった。





前置きが長くなったが、このアルバムはアートワークそのままの“音”を聴かせてくれる、サイケデリックの隠れた名盤だ。


全編を通し漂ってくるアナログシンセ独特の温もりが気持ちよく、スピーカーから流れてくる音に全神経を注いでいた。

耳に入ってくるのはひたすら現実逃避したようなサウンドで、カーテン越しに差し込んでくる陽光と共に聴いていると身体がとろけていくような錯覚に陥り、それが心地良くて毎日のように流していた。


そして、“音楽に酩酊(めいてい)する”という表現があるが、僕が生まれて初めて音楽を聴いて酔う感覚に襲われたのがスペクトラムのこのアルバムだった。




高校生の頃からロックにのめり込み、毎日いろんなバンドの音楽を聴いていたが、ハマればハマるほど同世代の人達とのズレが生じていくという葛藤がずっと僕にはあった。

周りの同級生たちが最新の流行やJ-POPの話で盛り上がっていた中、一人だけこんなにディープな世界へと足を踏み入れてしまったため、皆の口にする話題がつまらなく感じ、無理に合わせるような器用な真似もできず孤独に浸っていた。



『俺って何で皆と同じような感覚じゃないんだろ』と長い間悩み続けてきたが、今振り返ると、実はあの頃の自分は幸せだったんじゃないかな、と感じている。


当時は苦しくて苦しくて仕方がなかったが、周りの価値観に流されず、自分が『本当に良い』と思えるものに夢中になれたのだし、今も変わらずこのスペクトラムのアルバムを聴いてこんなに幸せな気持ちになれるのだから、ロックにはそれだけの価値があるのだと思っている。


今ではロックを通じて音楽好きの仲間も増えたし、自分自身も成長して沢山の人の価値観を理解できるようになったのだから、遠回りしているかもしれないけれど、これで良かったのだろう、きっと。




“Highs, Lows And Heavenly Blows”を聴きながら、過ぎ去った年月を思い出し、今も僕はこのアルバムに耳を傾けている。













Undo The Taboo
https://youtu.be/8tbEaAHyXe4


Take Your Time
https://youtu.be/Pqz0P-YtvYU


I Know They Say
https://youtu.be/3tVrx9py1Fw


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Thank You !! See you !!