Gallery Nomart LIVE(Florian Walter, Atsushi Yamaji, .es)
2018年12月8日(土)、大阪市内にあるギャラリーノマル(Gallery Nomart)にて、名和晃平(ナワ・コウヘイ)氏の個展“Element - Black”最終日イベントに行ってきた。
今回のライヴは、ドイツで活躍するサックス&クラリネット奏者のフローリアン・ヴァルター(Florian Walter)、クラシックや現代音楽だけでなく『龍が如く』などのテレビゲームの作曲も手掛ける山路敦司、それにノマル専属アーティストの .es(ドットエス)という3組が出演した。
1組目は、橋本孝之(サックス&ハーモニカ)とsara(ピアノ)のユニット、 .es が登場。
ドットエスのお二人をはじめ、この日集まった観客のほとんども黒をメインとしたファッションに身を包んでいたためか、真っ白な空間にある名和氏の作品と溶け込んでいるかのようだった。
白黒のコントラストは、まるで60年代にでもタイムスリップしたかのような錯覚に陥る。
今回はsaraさんの鈴の音色に合わせて、サックスを吹き始める橋本氏。
何だか分からないが、ライヴを観る度にサックスの“凄み”が増しているように感じる。
そして、激しいながらも緩急をつけたピアノ伴奏でsaraさんが全体をコントロールしているかのような、絶妙のバランス感覚がたまらない。
ピアノもサックスもハーモニカも『やれることは何だってやる』というスタンスで、それまで認識していた楽器とは違う、“全く別の、音が鳴る物体”に見えてしまう。
2番目に登場したのは、現代音楽家の山路敦司氏。
ノートPCを操り“静かなノイズ”を繰り出す。
左右のスピーカーから流れる音を確認し、真っ白な空間で流れるノイズを聴いてるうちにスタンリー・キューブリックの映画『2001年宇宙の旅』にでも入り込んだかのような“未来の世界”を感じた。
そして、“静かなノイズ”がいきなりピタッと停止し、今度は“耳障りなノイズ”が会場全体に響き渡る。
耳をつんざくようなノイズ。
僕はノイズミュージックも多少は聴いてるが、山路氏が生み出すノイズはひたすら“狂暴”だった。
ただ、ずっと聴いてるうちに、そこからリズムが生まれ、身体が反応しだす。
居心地が悪いようで、実は心地良いという不思議な体験だった。
ラストはドイツからやってきたフローリアン・ヴァルター氏。
かなり年季の入ったサックスを使用していて、“2つの音を同時に出す”という離れ業を披露していた。
低音で凄みのある短音を鳴らしてる間も、高音はコロコロと転がるように走り続けている。
『どうやってるんだろう?』とずっと“?”が付きっぱなしだった。
あれだけの離れ業をやるには肺活量もそうとう必要だと思う。
ドットエスの橋本氏もフローリアン・ヴァルター氏も、僕たちが普段 目にするサックスという楽器とは違うように見えてしまう。
演奏終盤には、天井を突き破る勢いで激しく吹き鳴らし続けていた。
ライヴ後、出演者とオーナーの林聡氏(写真右)が作品を前に集まって撮影し、今回のイベントは無事に終了した。
昨年末にこのギャラリーノマルの存在を知り、音楽とアートという分野で何度も刺激的な体験をさせてもらっている。
オーナーの林さんが若い頃、前衛芸術の世界に魅せられて始めたというこのギャラリーは、日本が世界に誇れるものだと僕は感じている。
ここに集まった人々が、実際にどんな体験をしたのか?
これから先、そう思う人達が必ず現れるはずだ。
“生き証人”として、これからも僕は書き残していく。